札幌地方裁判所 昭和53年(ワ)5071号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
被告塚本が塚本車を所有していることは当事者間に争いがないところ被告塚本は本件事故は訴外佐々木の所謂泥棒運転中に生じたものであり、同被告に自賠法三条の運行供用者責任はないと主張するので検討する。
当事者間に争いのない請求原因1の(七)の(1)の事実に<証拠>を綜合すると次の事実を認めることができる。即ち、
被告塚本は昭和五三年六月一四日午後八時一五分ころ滝川市幸町の実妹山下貞子(以下訴外山下という)方に赴き、同訴外人方宅地敷地内に塚本車をドアに施錠することなく且つエンジンキー差し込んだまま駐車させた。右駐車場所は滝川市道(通称一丁目通)から五〇メートル程はついた空地であるが、右空地には自由に出入ができ、且つ右空地に通ずる道路には中央バスの停留所がある。右空地には被告塚本が駐車した際には他に二台の車が駐車していた。
訴外佐々木は前同日午後八時すぎころ、友人宅へ行くべく前記一丁目通を歩行中、車を窃んで乗り廻したい気になり、たまたま前記空地場所に至つたとき駐車中の車両が三台あるのに気づいた。そこで訴外佐々木はエンジンキーをつけたままの車があるかも知れないと考え塚本車のドアを引くと鍵がかかつておらず、しかもエンジンキーが差し込んだままであつたので、これを窃み出した。その後佐々木は右車両を運転していつたん国道一二号線を上砂川町付近まで行き再び滝川市に戻り、前記窃取場所へ戻ろうとしたが、右車両の所有者から追尾を受けているとの感覚にとらわれ逃走すべく再び国道一二号線に戻り旭川方面へ進行中の同日午後九時四〇分ころ本件事故を惹起した。以上の事実を認めることでき、これを左右するに足りる証拠はない。
右事実によると被告塚本は実妹宅の敷地内とはいえ、市街地にある市道に面した空地部分に自車を駐車させたのであるから、自動車所有者たる被告塚本としてはこれが第三者に無断で運行の用に供されることのないようエンジンキーをはずすことはもとよりドアに施錠する等の管理義務があるというべきである。しかるに被告塚本はこれを全く怠り、無施錠、エンジンキーをつけたまま放置しておいたのであるから同被告は塚本車の第三者による運転を許容していたものといわざるを得ない。そして本件車両を窃取した訴外佐々木は窃取後一時間余を経た昭和五三年六月一四日九時四〇分ころ所有者の追跡から逃走すべく走行中に本件事故を惹起したものであることに照すと、被告は未だ塚本車の運行支配を失つてはおらず、右車両の運行により生じた本件事故に対し運行供用者として自賠法三条の責任を免れないというべきである。
(宗宮英俊)